今までトリミングした犬の中で一番礼儀正しい犬です🤯🐶
ある日、トリミングサロンの扉がやわらかく開き、やさしい鈴の音のような足音とともに、その子はやって来ました。しっかりと磨かれたリードをつけ、背筋をぴんと伸ばして歩くその姿は、まるで王子様のよう。でも、何よりも私の心をつかんだのは、その瞳に宿る穏やかさと、まるで人間のように丁寧な“礼儀”でした。
名前は「コタロウ」。中型の柴犬で、まだ2歳だと飼い主さんは言いました。若い犬にしては落ち着きがありすぎるほどで、私のサロンに入ると、まずは小さなお辞儀のように軽く頭を下げたのです。え? これは偶然? それとも躾の賜物? そう思って微笑んだ私の表情を見て、コタロウは嬉しそうにしっぽを小さく振りました。控えめで、でもちゃんと気持ちが伝わってくるその仕草。最初から何か特別なものを感じずにはいられませんでした。
トリミング台に乗せるときも、コタロウは文句ひとつ言いません。じっと私の目を見て、まるで「よろしくお願いします」とでも言っているような表情を浮かべました。最初のシャンプーのときなんて、手を伸ばす私に向かって自分から足を差し出してきたのです。まるで、トリマーの私を「お世話になります」と迎え入れてくれているような、そんな所作。
泡だらけになった体を、そっと撫でるように洗っていると、コタロウはまるで赤ちゃんのように目を細め、気持ちよさそうにしていました。そして私が作業の合間にふと動きを止めると、コタロウは私の顔をじっと見つめ、小さく「フンッ」と鼻を鳴らしてくれます。まるで「大丈夫? 疲れてない?」と気づかってくれているみたい。そんな優しさに、私は何度も胸がじんわり温かくなりました。
ドライヤーの音が苦手な子は多いのですが、コタロウは違いました。音に驚くこともなく、まるで風に身をまかせるようにじっとしてくれます。時々風が耳に当たってくすぐったいのか、ぴくりと動かすものの、すぐにまた元の落ち着いた表情に戻るのです。その姿があまりにも可愛くて、私は何度も心の中で「この子、天使かな」とつぶやいてしまいました。
カットが終わって、最後の仕上げにリボンをつけようとすると、コタロウはふっと鼻を鳴らしてから、またあの小さなお辞儀をしてくれました。その瞬間、私は確信しました。この子は、ただ「礼儀正しい」犬なんじゃない。誰にでも、どんな瞬間でも、思いやりと敬意を忘れない——そんな心を持った、まるで人のような魂の持ち主だったのです。
飼い主さんが迎えに来たとき、私は思わずこう言ってしまいました。「今までトリミングした中で、一番礼儀正しい子です」と。飼い主さんは照れたように笑い、「小さい頃から、毎日“ありがとう”って声をかけながら育てたんです」と教えてくれました。
なるほど。礼儀とは、教えるものではなく、心で感じ、育てるものなのかもしれません。コタロウは、誰よりもその心を素直に表現できる存在だったのです。
その日からしばらくたった今でも、私は時々思い出します。あの小さなお辞儀と、やさしく見つめてくれた瞳。コタロウは、私のトリミング人生において、忘れられない「特別なお客様」として、今も心の中で輝き続けています。
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