毎日愛せるかわいい馬
ある小さな牧場の朝、やわらかな朝霧のなかから、とことこ歩いてくる影があります。その足取りは軽く、でもどこか優雅で、ひとたびその姿がはっきりと見えると、思わず息をのんでしまうことでしょう。栗毛に陽の光が反射し、まるで金色のヴェールをまとっているようなその小さな馬――名前は「ミルク」。
ミルクは、体高が少し低めのポニー種で、人懐っこくて、表情豊かな女の子。毎朝、柵の向こうからこちらを見つめては、「おはよう」とでも言うかのように鼻を鳴らし、甘えるように頭を差し出してきます。彼女のまん丸な目を見ていると、言葉が通じているような錯覚すら覚えてしまうほどです。
牧場の中でミルクは、ちょっとした人気者。なぜなら、彼女は“かわいい”の天才だから。おやつのにんじんを見つけたときのあの無邪気な表情、ブラッシングされて気持ちよさそうに目を細める姿、そして小さな子どもたちをそっと見守るような優しさ。ミルクと過ごす時間は、どこを切り取っても心が温まります。
ある日、小さな女の子が泣きながら牧場に来たことがありました。どうしても元気が出なくて、お母さんに連れられて来たのです。そんな彼女に近づいたのがミルクでした。ミルクはゆっくりと歩み寄り、そっと鼻先で女の子の手に触れました。そして、まるで「だいじょうぶだよ」と伝えるように、肩に頭をちょこんと乗せたのです。女の子は泣き止み、ぽつんと「また来たい」と言いました。その日から彼女は毎週ミルクに会いに来るようになりました。
馬という動物は、強さや俊敏さだけでなく、実は繊細で、そしてとても感情豊か。とくにミルクのようなポニーは、人との距離が近く、心を通わせることができます。ミルクはその典型で、まるで“ちいさな家族”のように寄り添ってくれる存在です。
夕暮れどき、牧場の空がピンク色に染まり始めると、ミルクはいつもの場所に座り込む癖があります。前足を折りたたみ、耳をぴくぴくさせながら空を見上げるその後ろ姿は、まるで物思いにふける少女のようで、その横に座ってただ一緒に時間を過ごしたくなるのです。
「毎日愛せるかわいい馬」――その言葉は決して比喩ではなく、現実に存在します。それは、言葉ではなく、しぐさやまなざしで愛情を伝えてくれる存在。朝のあいさつも、昼のにんじんタイムも、夕方ののんびりお昼寝も、すべてが愛おしい瞬間に変わります。
もし、あなたの毎日に少しだけ心の余白があるなら、そこにミルクのような小さな馬がそっと寄り添ってくれるかもしれません。彼女のあたたかなまなざしが、あなたの心を静かに包み込んでくれるでしょう。
愛とは、大きな声で叫ぶものではなく、そっと隣にいること。そんなことを毎日教えてくれる、小さな馬がここにいます。今日もミルクは、誰かをやさしく迎え入れる準備をして、牧場の風のなかで耳を澄ませているのです。
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