このカメは、自分の猫と一緒に面白いアイススケーターだと思っています。
氷の上のふたり:カメと猫のスケート日記
朝の光が差し込むリビングルームの窓辺に、ぽつんと置かれた小さな水槽。その中で、のんびりと過ごしているのは、一匹のカメ。名前は「ポコ」。そして、その水槽の隣で毛づくろいをしているのが、長毛の気まぐれ猫「ミルク」。ふたりはとても不思議なコンビだ。だけど、このふたりが織りなす日々は、どんなドラマよりも微笑ましく、そしてちょっと笑える。
物語は冬のある日、リビングルームの床に設置された小さなプラスチック製のスケートリンクから始まった。子ども用のおもちゃとして買われたこのリンクが、まさか動物たちの遊び場になるとは、誰も想像していなかった。
最初にリンクへと足を踏み入れたのはミルクだった。好奇心旺盛な彼女は、スルスルと足を滑らせながら、時折爪を出してはバランスを取る姿が、まるでフィギュアスケーターのようだった。その動きは優雅とは言い難いけれど、どこか誇らしげで、氷の上を舞うようだった。
そして、ポコの番。
飼い主がそっと彼を水槽から取り出し、スケートリンクの端に置いた瞬間。ポコはじっと足元を見つめた。冷たい感触、すべる床…普段とはまったく違う環境に、さすがのポコも一瞬、固まった。
でも次の瞬間——
「キュイッ」
という、ちょっとやる気に満ちた声とともに、ポコは前足を出した。そして、すこしよろけながらも、一歩ずつ、リンクの真ん中へ。彼の動きは、決して速くない。でも、確実で、どこか「自分はスケーターなんだ」という自負さえ感じさせるような、そんな歩みだった。
ミルクはポコの横にぴょんと滑り込み、しっぽを高く掲げた。まるで「このカメは私のパートナーよ」と言わんばかりに。そして、その日から、ふたりは毎日リンクの上で“練習”を始めた。
もちろん、本物のスケート技術はない。ポコはのそのそと進み、ミルクはときどきジャンプして驚かせる。だけど、それが可笑しくて、可愛くて、見ているこちらはいつも笑ってしまう。
ポコの目には、「自分はミルクと一緒に滑っている」ように映っているのかもしれない。飼い主が音楽を流せば、ポコはその音に合わせてゆっくりと進み、ミルクは回転してみせる。まるで即席のアイスダンス。
ある日、ポコがすべって転んだ(というか、ひっくり返ってしまった)時、ミルクはすぐに駆け寄って、前足でそっとポコの甲羅を押した。そんな仕草がまるで「大丈夫?立てる?」と問いかけているようで、見ていたみんなが「おぉー」と声をあげたほど。
このふたりにとって、スケートは競技でも、技術の見せ合いでもない。ただ楽しくて、心が通じ合う時間。
そして何より、ポコはきっとこう思っている——「ぼくは猫と一緒に、今日もリンクの上で輝いているんだ」と。
誰が見ても滑稽なシーン。でも、その裏には深い絆と、小さな誇りがある。
今日もまた、リビングの隅で小さなリンクがにぎやかになる。氷の上をよろけながら進むカメと、その隣を軽やかに舞う猫。
この不思議なスケーターたちにとって、冬はまだまだ終わらない。
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