パンを丸ごと食べ尽くし、パンくず一つ残さなかった | 26ポンドの猫ビーン
ある日曜日の朝、陽の光がゆっくりとキッチンの床を照らすころ、家中がほんのりとした焼きたてパンの香りに包まれていました。トースターの横には、まだ温かさが残る丸ごとのカントリーブレッドがひとつ。家族は皆、まだベッドの中で夢の続きを見ている時間帯。
しかし、そのキッチンには、ある“大食漢”が静かに忍び寄っていたのです。
名前は「ビーン」。
ふわふわの毛と、もふっとした丸いフォルムがチャームポイントの26ポンド(約12キロ)の大きな猫。彼はただの猫ではありません。家族の中で一番おっとりしていて、一番ずる賢くて、そして何より、一番“食いしん坊”なのです。
ビーンは、もともとは小さな保護施設で育ちました。
他の猫たちと一緒に、静かな日々を過ごしていたある日、とある家族の目に留まりました。
そのときすでに、彼はちょっぴりぽっちゃりしていたけれど、その真ん丸な目とふてぶてしい態度がなんとも言えず魅力的で、家族は即決。
「この子はうちの“運命の猫”かもしれない」
そうして、ビーンの新たな生活が始まったのです。
最初の数日は、まだ遠慮気味だったビーン。
けれど、次第に家の空気に慣れてくると、本領を発揮しはじめました。
特に食べ物に対する情熱は並々ならぬものがありました。
朝ごはんの匂いを察知すると、ドアの向こうから「にゃあ」と一声。
家族が気づかないうちにテーブルの上にジャンプして、ハムを一枚スッと奪っていくこともしばしば。
それでも、その姿はどこか憎めなくて、「ビーン、もう!」と叱りながらも笑ってしまうのです。
そして…あの事件が起きました。
その日、母さんは市場で買ったお気に入りのパンを朝食用に置いておきました。
丁寧に発酵させた、外はカリッと中はふんわりの特別な一品。
「明日の朝は、ゆっくりこのパンとコーヒーで過ごしたいな」と、楽しみにしていたのです。
けれど朝起きてみると、キッチンにはパンの姿はなく、テーブルにはパンくずすら見当たらない。
おかしいな?と辺りを見渡した家族の視線の先には…ソファの上で満腹そうに寝転ぶ、まるで満足げな顔のビーン。
お腹はいつもより丸く、毛には少しだけパン粉のかけらが。
まるで「何も知らないよ」と言いたげな顔をしながらも、どこか誇らしげに見えるから不思議です。
その事件を境に、家族は食べ物をより高い位置に置くようになり、ビーン用の「おやつタイム」が設けられることになりました。
でもビーンは、食べ物だけを求めているわけではありません。
甘える時は全力で喉を鳴らし、寒い日は誰かの足元で丸くなり、時にはテレビのリモコンを押してチャンネルを変えるという謎の特技まで披露してくれるのです。
そんな自由気ままで、少し太めな猫との暮らしは、時にハラハラしながらも、確かに心をあたためてくれます。
ビーンは今日も、どこかで何かの匂いを追いかけながら、しっかりと存在感を放っています。
パン一斤を跡形もなく食べ尽くしたあの日から、彼は家族の中で“伝説の食いしん坊”として語り継がれることになりました。
そして、パンくず一つ残さないその徹底ぶりに、家族は今でも思わず笑ってしまうのです。
「またやったね、ビーン。」
そんな言葉と共に、今日も彼は丸くなって、静かに夢の中へ――たぶん、パンの夢でも見ているのでしょう。
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