猫は犬への愛情を否定できない


ある午後、日が少しずつ傾き始めたころ。窓際のクッションの上に、小さな白猫「ミルク」はそっと体を丸めていた。外の風は柔らかく、鳥のさえずりが遠くに聞こえてくる。いつものように静かな午後…のはずだった。

でも、ミルクの耳はぴくりと動いた。廊下の先から、ドタバタと足音が近づいてくる。そして次の瞬間、部屋の扉からひょっこりと顔を出したのは、彼女の“あの子”――ゴールデンレトリバーの「モカ」だった。

モカは、いつも大きくてうるさくて、無邪気な犬だった。出会った頃、ミルクは心底うんざりしていた。「近寄らないで」「静かにしてよ」そんなふうに思っていた。でも不思議と、モカはそんな態度にもめげず、いつも尻尾を振って近づいてきた。

ミルクが日向ぼっこしていれば、そっと隣に寝転び。
ミルクがごはんを食べていれば、数歩離れて静かに見守り。
ミルクが高い棚の上に登ってしまっても、ずっと下から見上げて待っていた。

そんな日々が続いたある日、ミルクはふと気づいたのだ。
「どうしてこの犬、こんなに私のことが好きなの?」
そしてもう一つ、「…どうして私も、この子が来ると、ちょっとだけ安心するんだろう?」

■ 違うからこそ、惹かれ合う

ミルクは自由気まま、誰にも媚びない気高い猫だった。
モカは人懐っこく、喜怒哀楽が顔に出るような正直な犬。
性格も、動きも、習性もまるで違う。

それでも、心のどこかでミルクはモカを「特別」と思い始めていた。

例えば、夜。
雷が鳴るとミルクは押し入れの奥に隠れてしまう。
でもそんなとき、モカは扉の前でじっと座っていた。ミルクが出てくるまで、ずっと。
何も言わずに、ただ「そこにいる」というだけで、ミルクの胸の奥の小さな不安をそっと包んでくれる存在。


■ それは友情?それとも…

ある日、ミルクはソファの上でうとうとしていた。
そこにモカが静かにやってきて、彼女の前足の上に自分の鼻先をのせた。
一瞬、驚いたミルクは体を固くした。でもすぐに…ほんの少し、ほんの少しだけ前足を動かして、モカの鼻をなでるように包みこんだ。

その仕草は、あまりにも優しく、そしてあたたかかった。

飼い主がカメラを構えたとき、その瞬間はもう終わっていた。
でも、ミルクの瞳の奥に映っていたのは、確かに“愛情”だった。

■ 否定できない気持ち

誰かを好きになる理由なんて、きっとどこにもないのかもしれない。
ただその存在がそばにあるだけで安心する。
ただそのぬくもりにふれるだけで心がほどける。

ミルクは、まだ言葉にこそできないけれど、モカに惹かれている。
そしてきっと、もうそれを否定することはできないのだ。

猫は、気ままで、繊細で、自分の世界を大切にする生き物。
でもそんな猫が心を許した相手――それがモカだった。

愛情は、形を選ばない。
種族も、性格も、生き方も違っていい。
ただ、「そばにいたい」と思うその気持ちが、本物ならば、それで十分。

今日もまた、窓際のクッションに2つの影が寄り添っている。
ミルクとモカ――犬と猫。
誰よりも不思議で、誰よりも美しい、愛のかたち。

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