寝返りもできなかった巨大猫が泳ぎを覚える
ある日、動物保護施設に運び込まれた一匹の猫。その姿を見たスタッフたちは、一瞬、言葉を失いました。そこに横たわっていたのは、まるで毛玉のように丸く、体重はなんと20キロ超。名前は「しらたま」。その巨体のせいで、彼は自力で寝返りすら打つことができず、ただ横たわり、時折かすかな声で「ニャー」と鳴くだけの毎日を送っていたのです。
この物語は、そんな「しらたま」が、水の中で新しい自由を見つけ、心も体も軽くなっていく、小さな奇跡のような旅の記録です。
しらたまが太ってしまった理由は、皮肉にも「愛されすぎた」からでした。元の飼い主は高齢者で、愛猫におやつを与えることが何よりの楽しみだったそうです。遊ぶよりも食べる、走るよりも寝る——しらたまの世界は、食器とソファの間だけで完結していました。
しかし飼い主の体調が悪化し、飼育が困難になったことで、彼は施設に預けられることに。スタッフが最初にしたのは、しらたまの体をやさしくさすって、言葉をかけること。「よく来たね、これから少しずつ頑張ろうね」。その日から、彼の新しい人生が始まりました。
しらたまのリハビリ計画には、獣医師の助言で「水中運動」が加えられました。水の浮力を使えば、体への負担を減らして少しずつ筋力をつけられるかもしれない——その希望が込められていました。
初めてのプールの日。スタッフがしらたまを水の中へそっと入れると、彼は目を丸くしました。濡れるのが嫌で抵抗するかと思いきや、驚いたことに、彼はとても静かでした。まるで「ここ、ちょっといいかも」とでも言いたげな表情。そして次の瞬間、ゆっくりと前足を動かし始めたのです。
その様子は、まるで雲がぷかぷかと浮かんでいるようでした。水面にただようしらたまは、重力から解放されたかのように身軽で、嬉しそうな顔をしていました。見ていたスタッフたちは「この子、本当に泳げるようになるかもしれない」と心から感じた瞬間でした。
それから数週間、しらたまは毎日少しずつ水の中で体を動かしました。最初は数秒間の浮遊から始まり、徐々に数メートル泳げるように。動きも少しずつ俊敏になり、水をかくたびに彼の顔には小さな誇りが浮かんでいくようでした。
プールの後には、タオルで包まれて大きなゴロゴロ音を響かせながら眠るしらたま。その背中は以前より確かに引き締まり、何よりも、目が生き生きとしてきたのです。
スタッフの一人がこう言いました。「しらたまが泳ぐたび、彼自身の世界が広がっていくような気がするんです。」
数ヶ月後、しらたまは10キロの減量に成功。今では自力で寝返りを打ち、ゆっくりながら歩くこともできるようになりました。水泳は今でも大好きで、プールに入るときには尻尾をピコピコと振るのです。
しらたまの姿は、私たちに教えてくれます。どんなに動けない日々があったとしても、どんなに過去が重たく感じたとしても、今日という一歩が未来を変えるかもしれないということを。そして、その変化は、誰かの優しさと、小さな勇気から始まるのだということを。
ふわふわで、まるで抱きまくらのようだった猫が、水の中でゆらりと泳ぐ姿は、まさに「生きる喜び」を体現していました。しらたまは今も、ゆっくりと、でも確かに、自分の力で人生を泳ぎ続けています。
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