この野生の鶴は私を家族として選び、またその子たちも近くに連れてきました。


それは、風がまだ冷たい春のはじまりの日でした。

朝靄がうっすらと広がる湖のほとりで、私はいつものようにカメラを首にぶら下げて、静かに歩いていました。
ここは、毎年鶴たちが越冬を終えて北へ向かう途中に羽を休める場所。

私はただ、遠くからその優雅な姿を写真に収めるのが好きで、
毎年この季節になると、ここに来ては彼らを見守るのが習慣になっていました。

でも——
その日、私の人生はそっと変わったのです。

一羽の鶴との出会い

湖のほとりの枯れ草の影に、一羽だけ、群れから少し離れてたたずんでいた鶴がいました。
その姿は凛として美しく、けれどどこか寂しげな雰囲気もありました。
私はそっとカメラを下ろし、その場にしゃがんで静かに呼吸を合わせるように見つめていました。

すると、その鶴は私の方を見て、一歩、また一歩と近づいてきたのです。
驚きと共に、胸の奥がふわっと温かくなったのを覚えています。
目が合った瞬間、何かが通じたような気がしました。
言葉も、説明もいらない、不思議な信頼のようなもの。

私は動かず、ただそこにいて、その鶴の存在を全身で受け止めることしかできませんでした。
やがて鶴は、私のすぐそばに立ち、首を傾げるようにしてしばらくじっとしていました。
まるで、「あなたを見に来たの」とでも言いたげに。

いつのまにか、家族になっていた

その日を境に、その鶴は毎朝、私が湖に来ると現れるようになりました。
ほかの群れの鶴たちが遠くにいるなか、彼女——私は勝手に「ユキ」と呼んでいました——は、まるで私を仲間の一員のように扱ってくれました。

ある日、ユキは私を見つけると、何度か鳴き声を上げてから、背後の茂みへと歩き始めました。
私は静かにそのあとをついていきました。

すると、そこには——
ふわふわの産毛に包まれた、小さな鶴のヒナたちが二羽、地面に座っていたのです。

息をのむような光景でした。
そして何より驚いたのは、ユキが私にそのヒナたちを見せてくれたということ。
私にとって、それは「あなたを信じてる」という無言のメッセージに思えました。
彼女は、私を家族として選んでくれたのです。

境界を越える優しさ

野生の動物と人間との間には、超えることのできない一線がある——
そう思っていた私の価値観は、ユキによってやさしく揺らぎました。

彼女は、言葉を持たない代わりに、信頼と時間、そして静けさで私と絆を育んでくれました。
私は何も与えていないのに、彼女はすべてを分かち合ってくれたのです。

それは、「人間」と「動物」という枠を超えた、もっと根源的な“存在のやさしさ”だったのかもしれません。

今も、心に羽ばたいている

季節はめぐり、ユキたちは北へと旅立っていきました。
彼女の姿を見送ったとき、胸が少しだけ痛んだのを覚えています。
けれどそれは、悲しみではなく、出会えた奇跡に対する感謝の涙でした。

今でも私は、あの湖のベンチに座るたび、あの日々を思い出します。
もしかしたら、いつかまた——
ユキとその子たちが、あの場所へ帰ってきてくれるかもしれない。

その日が来るまで、私はまた静かに、朝の空気のなかで、鶴たちの声に耳をすませていようと思います。

“家族”とは、血のつながりだけではない。
信頼と静けさの中に、心が寄り添ったとき、そこに家族が生まれる。

それを教えてくれたのは、一羽の野生の鶴でした。

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