ハスキーとボーダーコリー、ふたりのアスリートが並んだ朝
まだ朝露の残るグラウンドに、2匹の犬が並んで立っていた。
ひとりは銀色の毛並みを太陽に光らせ、力強い足取りでステップを踏むハスキー。
もうひとりは、鋭い瞳で前を見据えるボーダーコリー。しっぽを軽く揺らしながらも、静かな集中が全身にみなぎっていた。
今日は年に一度のアジリティ大会。飼い主たちが愛犬と心を通わせながら、障害物を超えてゴールを目指す競技だ。
でも、観客たちが楽しみにしているのは、ある意味でこの2匹の“対決”だった。
ハスキーの「ユキ」は、まるでオオカミのような美しさと、雪原を走り抜けるような力強さを持っている。
彼女は風をまとうような走りで、直線のスピードでは右に出る犬がいない。
一方で、ボーダーコリーの「レオ」は、まるで心が読めるかのように飼い主の指示を先読みし、身体をしなやかに折りたたみながら障害を抜けていく。
俊敏さと知性が溶け合ったような動きに、多くの飼い主が「うちの子もこんなふうにできたら…」と羨望を込める。
それぞれの「得意」と「らしさ」
アジリティのコースには、ジャンプ、トンネル、シーソー、スラローム…。多様な障害が並んでいる。
ハスキーのユキは、最初のジャンプを勢いよく越え、トンネルも駆け抜ける。しかし、スラロームの細かい動きになると少し苦戦。
「これ、必要?」とでも言いたげな顔で、一瞬立ち止まって飼い主を見上げた。
ボーダーコリーのレオはというと、スラロームではまるで水の流れのように滑らかにジグザグを駆け抜けた。
でも、彼の本当の見どころは、飼い主の声を聞いた瞬間に全身が反応し、まるで糸でつながっているように動くその連携力だった。
ユキにはユキの強みがあり、レオにはレオの美しさがある。
スピード vs 繊細さ。
パワー vs 知性。
けれど、どちらにも共通していたのは「飼い主を信じて走る」という一途な思いだった。
勝敗よりも大切なこと
競技が終わり、2匹は芝の上でじゃれ合っていた。まるでライバルというより、共に戦った戦友のように。
飼い主たちは、順位よりも、愛犬が今日どれだけ自分と心を通わせてくれたか、そのことに胸を打たれていた。
ハスキーはときに自由奔放で、思いもよらない動きをする。
でも、それがまた「生きている喜び」にあふれていて、見ているだけで元気になる。
ボーダーコリーは、まるで人の気持ちをそのままなぞるように、賢く正確に動く。
その忠実さとひたむきさは、人と犬の絆の深さを実感させてくれる。
結局、アジリティはタイムや順位だけでは測れない。
それは、飼い主と犬とが一緒に“生きている”ことを、走る中で感じる競技なのだ。
そして今日も、ユキとレオはそれぞれの個性を輝かせながら、たくさんの笑顔をつくってくれた。
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